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絹と羽二重についての、アラカルトな話です。

絹と羽二重について

絹は素晴らしい特質と機能性を持つ反面、それが実用的には欠点になることがあります。訳5000年にもわたる
人間と絹の歴史の中で、長らく特権階級の占有品として珍重されることが在った為、他の天然繊維ほど、一般生活
に溶け込んだ地位を確立できなかった。実用品として利用されてきたのはごく最近のことといえます。絹の持つ特性
と機能性を最大限にいかすためには、絹を知り、少しだけ”絹の気持ち”に近づくことです。肌触りを良くし、真珠の
ような光沢を出す為、精練という工程を経ます。そのため接着剤や保護剤の役目であるセリシンというタンパク質や
撥水や防虫のためのロウ分、殺菌成分、防カビ成分をそぎ落してしまいます。いわば赤ちゃんのようなデリケートな
柔肌のフィブロインというタンパク質がむき出しのまま外気にさらされます。それ故洗濯、アイロン掛け、防虫など
の保管にはとくに取り扱いに配慮が必要になります。これらのことに注意していただければ、美しや絹独自の機能を
長く維持できると思います。


羽二重(はぶたえ)

群馬県・長野県・福島県は乾繭の生産でダントツの生産地でした。とくに福島県は東北地方に位置し、その気候条件
から世界的にも優良な細い生絲が生産されてきました。その優良な細い生絲を使用していた川俣町を中心とした軽目
羽二重の産地は薄くても丈夫で美しいので、貴婦人のストッキングや手袋、パラシュート(落下傘)として明治以降
朝鮮戦争頃まで盛んに利用されてきました。(ナイロンが発明され、実用化されるまで) 川俣町の輸出羽二重は筬
(おさは)経糸二重織物の略のことで、従来の経糸(たていと)1本をさらに2本にして織り上げたもので、経
糸密度が増したことで薄い織物(軽い目方)でも丈夫な織物になった。また裏地まで透けるような生地で、経糸密度
が濃いため、経糸がスリット(縦縞)のように見え、表地と裏地の微妙な差で木目模様が浮かび上り、そのことが貴
婦人達の絶大な支持と好評を得て、欧米に盛んに輸出され、明治時代からの日本の近代化を陰から支えてきた歴史が
あります。今でも欧米の古くからの絹商人からは”KAWAMATAをください”という注文が横浜の商社に来るそう
です。


蚕(かいこ)と桑(くわ)

蚕という字は”天からの人間への贈り物の虫”という意味です。繭は”草かんむりは桑を表し、桑を食べ、糸を吐く虫
が作る部屋”という意味です。糸という字はもともと生糸(生絲)という意味で蚕が作る繭を煮て作り出す長い繊維
の事でした。天然繊維の綿も羊の毛も、合成でつくりだすナイロンやビニロン、テトロンもすべて撚りあわせたり、
紡いだりして、短い繊維を生糸のように細長い糸状にして織物にしてきました。だから綿糸、羊毛糸、毛糸という
漢字になっています。自然界では生糸のように1粒の繭から約800mから1500mの長さのある糸ができる生物
は蚕の仲間以外、存在しません。宇宙に最初に行った動物は、実は蚕だったのです。犬や猿より先に蚕が選ばれて
宇宙旅行をしてきたのです。外国では蚕は生物学で、桑は植物学として扱われていました。日本では国策として強力
な援助もあり、蚕糸学として蚕も桑も一体となり学問され、研究改良されてきました。遺伝子レベルまで解明された
のは蚕が動物界では初めてのことで、メンデルの遺伝の法則が動物で初めて証明されたこと、ダーウインの進化論の
証明が立証されたこと、宇宙の空間での遺伝子の影響を調査する実験動物に選ばれたことにつながりました。

桑はイチジクやカジュマルなどと同じクワ科の植物で、原産地は中国北部から朝鮮半島といわれています。果実は
桑の実(マルベリー)果実酒や非常食として利用される。葉や実は植えてから2〜3年で収穫できる。樹齢1000
年を超える桑の木もある。魯桑(ろそう)は中国産で生薬となる。蚕の飼料は山桑、白桑(からやまぐわ)やその
品種改良のもの、島桑は江戸指物や工芸用、枝垂れ桑は園芸の観賞用。養蚕に使用される桑は収穫作業をしやすく
するために、主幹を切り詰め、低木のようにしている。各地の風土に合わせて品種改良がなされている。13年ぐら
いで植え替えをして良質な桑葉の生産をしている。


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本田絹

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